第80回アカデミー賞、作品賞・監督賞受賞。
「ノーカントリー」
1996年、ある兄弟が製作した「バウンド」という映画がアメリカで公開されました。
日本でもスタイリッシュで新感覚なフィルム・ノワールが話題になっていました。
この兄弟はその後、キアヌ・リーブス主演の誰もが知っているあの大ヒットシリーズを世に送り出します。
そう「マトリックス」シリーズです。
この兄弟とはアンディ・ウォシャウスキーとラリー・ウォシャウスキーの事でございます。
ド派手な作品で注目を浴びるウォシャウスキー兄弟がハリウッド映画界の東の兄弟なら、西の兄弟はコーエン兄弟と言えるでしょう。
監督ジョエル・コーエンと脚本イーサン・コーエンの二人により、人間の滑稽さ、世の中の不条理さを淡々と描く作風で多くの賞を受賞している兄弟です。
1991年公開「バートン・フィンク」。
第44回(1991年度)カンヌ国際映画祭でパルム・ドール、男優賞、監督賞を受賞。同映画祭初の三冠。
第17回(1991年度)ロサンゼルス映画批評家協会賞で助演男優賞、撮影賞を受賞。
第57回(1991年度)ニューヨーク批評家協会賞で助演女優賞、撮影賞を受賞。
1996年公開「ファーゴ」。
第49回(1996年度)カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。
第22回(1996年度)ロサンゼルス映画批評家協会賞で脚本賞を受賞。
第63回(1996年度)ニューヨーク映画批評家協会賞で作品賞を受賞。
第69回(1997年度)アカデミー賞で主演女優賞、脚本賞を受賞。
2000年公開「オー・ブラザー!」。
第58回(2000年度)ゴールデングローブ賞で男優賞(コメディ/ミュージカル)を受賞。
2001年公開「バーバー」。
第54回(2001年度)カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。
第27回(2001年度)ロサンゼルス映画批評家協会賞で撮影賞を受賞。
この受賞歴の数々!
「ファーゴ」は、私の映画に対する嗜好を大きく変えた作品です(また大げさな)。
上記作品以外でも「ビッグ・リボウスキ」などは、人と言う生き物の可笑しさや生きる事の不条理さに満ちた大傑作だと思うのですが、あまり評価を耳にしたことがありません・・・ね。
そしてコーエン兄弟の最新作でございます。
2007年公開「ノーカントリー」。
第74回(2007年度)ニューヨーク映画批評家協会賞で作品賞、助演男優賞、監督賞、脚本賞を受賞。
第65回(2007年度)ゴールデングローブ賞で助演男優賞、脚本賞を受賞。
第80回(2008年度)アカデミー賞で作品賞、助演男優賞、監督賞、脚色賞を受賞。
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コーエン兄弟の作品は一般受けする間口の広い作品ではないと思われます。
物語は淡々と進み、アクション映画のような爽快感やミステリ映画のようなどんでん返しは無く、胸を打たれるような人間ドラマもあるわけでなし。
エンディングを迎えた時の「で、結局何が言いたかったのか・・・?!」感の強さと言ったらありません。
それこそ映画のように山あり谷ありのドラマチックな人生を送る人は世の中にどれだけいるのでしょうか。
ほとんどの多くの人が、ドラマとは無縁の日常を粛々と積み重ねていかれるのだと思うのです。
だからこそ人は映画や小説のドラマに陶酔し、感銘を受け、登場人物に憧れ自分を重ねるのだと思うのです。
そこにこそ映画(フィクション)の存在意義があるのだと思いませんか?
しかしながら、コーエン兄弟の作品は、映画(フィクション)でありながら人の人生そのもの(リアル)を描いているように思います。
刻々と進む時。
観客が望む望まないに関係なく、登場人物の誰にも平等にそして唐突に訪れる不幸。
エンターテインメント性に応えるでもなく反発するでもない、ただ展開していくストーリー。
期待性に沿う事のない、奇をてらう事のない面白みのないラスト。
そこに、観客が喜ぶ意外な展開など望むべくもなく。
一体全体、なぜ休日にお金を払って時間を費やしてまでそんな面白みのない日常を見せつけられるのかと。
しかし、そこがコーエン兄弟の映画の最大の魅力なのです。
世の中の時間は残酷なまでにただただ過ぎていき、過程に関係なく合理性も意味もなくただもたらされる結果。
その中で右往左往する登場人物達。
愚かしい登場人物を可笑しく愛おしく感じられたら、もうあなたもその日からコーエン兄弟のファンでしょう。
私と同じように。
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さて、「ノーカントリー」でございます。
ストーリーは凡庸に感じられ。
ある登場人物の存在がとにかく異質。
ご覧いただければ一発で誰の事かお分かりになるでしょう。
リアルな世界観でとにかくその異質な存在が観客の目を引くことでしょう。
一体その登場人物は何を象徴しているのか。
そして、ラストを迎えた後この登場人物はどうなったのか。
観終わった後の「で、結局何が・・・」感は今までで最高。
そうそう、「ノーカントリー」の原題は「No Country for Old Men」。
「老人に住む国はない」
理解不能な事件などが増え、現代から取り残された老人が安心して住める所はなくなった。
といった意味合いのようでございます。
「老人」が指しているのは何なのか。
映画を理解できない観客でない事を願っております。
我々は「ノーカントリー」から何を得るのでしょうか。
では。
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